殺人学概論第一講
殺人について考えてみる。時は現代、AがBを手段Cで殺した。この状況が事実の全て。
もしこの事実が周知のものであれば、Aは司直の手に委ねられ、何らかの罰を受けることになる。
では、罰を受けずに殺人を犯す方法はないのだろうか。
手始めに、状況を最も悪いものから順番に分類していく。
- 殺人の事実そのものが誰にも知られていない。(最悪)
- 殺された者は行方不明者として警察に届けられる(が見つけられない)。
- 死体は見つからない。ただし、事故ないし自殺を示唆する状況がみつかり、そのように処理される。
- 死体は見つかるが、事故ないし自殺として処理される。
- 他殺と判断され、警察が動き出す。しかし迷宮入り。
- 他殺と判断され、警察が動き出す。容疑者群を選び出すが犯人は入っていない。さらに迷宮入り。
- 他殺と判断され、警察が動き出す。容疑者群を選び出すが犯人は入っていない。非犯人を逮捕して裁判にかけて犯人にしてしまう。
- 他殺と判断され、警察が動き出す。犯人を含む容疑者群を選び出すも、迷宮入り。
- 他殺と判断され、警察が動き出す。犯人を含む容疑者群を選び出すも、非犯人を逮捕して裁判にかけて犯人にしてしまう。
- 他殺と判断され、犯人は容疑者にあげられるが、証拠不十分のため不起訴。
- 他殺と判断され、様々な証拠から犯人を特定され、裁判で罪が確定する。(最善)
なお、最悪/最善の区別は社会通念の観点による。
殺人学は、この「最悪」な状況を作り出せるかどうかが目的になる。