「空の下屋根の中」

 まんがタイムきららCaratは、最近ロボ娘漫画が載っていなくて切ってもよかったのだが、ある漫画のおかげで続行中だ。
 その漫画は、双見酔の連載「空の下屋根の中」。ニートの少女の物語である。
 何も考えないまま高校を卒業し、進学する訳でもなく就職する訳でもなく、その時になって初めて「あれ?」と思ってニートになっていた香奈絵。最近ではハローワークに行くことそのものが楽しくなってくるなどと言う本末転倒状態。ハロワに行くだけ「ラブやん」のカズフサよりはるかにマシであるが。カズフサとはまた性格も違うし、作品自体も毒が強い訳ではない。押しつぶされそうな不安感がある訳でもなく、独特の開放的な雰囲気がある。
「自分は何がしたいのか、自分は何ができるのか」自問自答を繰り返す香奈絵の描写が大変に興味深い。作者は一体どう落とすのか。落とさないまま(就職しないまま)終わるのか。萌え漫画で社会派。これほど別の意味で連載終了が待ち遠しい漫画も近年なかったと思う。
 実際、「やりたいことがない」と言う感覚はわからないでもない。そういう人間は昔からいたはずなのだ。生きるためにはまず金、と言うマイナスからの出発が普通の社会では、そういう人間は表面化しない。死にたくないと言う生存本能が、逆説的に全ての人間に何でもいいから働く動機を与えていた訳だ。ある程度社会が豊かになって、働かなくてもなんとかなる環境が整ってから表面化した病理だろう。いや、俺も今の職に就かなかったら、今頃は一次選考も通らないようなラノベもどきを毎月ゲフンゲフン。
 昔やっていた月一のゲーム大会で、馴染みの高校生男子が言っていた。「(卒業後に)やりたいことがない」と。俺はなんとも言えなかった。別に目的があって今の職業に就いた訳ではない俺に、それに対して何か言うだけの資格があるかどうかも疑問だった。
 この作者は、香奈絵に何と声をかけるつもりなんだろう。今からあれこれ想像している。
まんがタイムきららCarat 2009年1月号
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