明晰夢で悪夢なのに続きが見たいと思ってしまう

 悪夢が明晰夢だとわかった途端に、むしろホラー映画のような「安全な危険」と認識してしまって、続きが見たくなるのかも。
 夢の中で、私は小太りメガネの独裁者に仕えるふりをする敵国のスパイになっていた。
 そこで色々と調べて情報をためていたのだが、一群の政府高官たちに怪しまれてスパイとばらされそうになった。なので、逆に色々と策謀をめぐらして、その政府高官たちを、やっとの思いで独裁者の眼前で拳銃自殺に追い込んだ。
 政府高官たちは、独裁者の目の前で悔しがったり、悄然と受け入れたり、私を睨みつけたりしながら次々とこめかみに銃を当てて死んでいったのだが、最後の憲兵隊長だけは、私を小声で「これで大丈夫と思うのは間違いだぞ」と嘲りながら拳銃自殺した。
 独裁者が退席した後、気が緩んで同僚の同じような政府高官のふりをしたスパイと何気ない会話をしてしまう。その途端、内線電話が鳴り、独裁者から「執務室に来い」とだけ言われてしまう。そこで初めて、室内に盗聴機が仕掛けられていた可能性に思い当たる。なんで間抜けなんだ。ごきゅりと喉を鳴らしながら、執務室に続くエレベーターに乗り込む。エレベーターの行先ボタンを押そうとして、棒と丸が組み合わさった変な文字になっていてどれを押せばいいかわからない。
 そこで目が覚めてしまった。
 続きが見たいような見たくないような。