社会のお時間―公立図書館ってどんなところ? 〜明るい未来溢れる図書館〜

 やあ、図書館のことを知らないもとい知りたい世間知らゲフンゲフン、未来溢れるエビバデこんにちは。
 教職員資格なんて全くもっていないが人に何かを教える人のことをセンセーと呼ぶらしいので、私のことも是非ともそう呼んでくれ。
 お、さっそく質問かな。
http://b.hatena.ne.jp/aliliput/20080122#bookmark-7172348

せんせー、図書館員って情報のプロなんじゃないの?

……では、その質問に答える前に、一つ簡単な話をしよう。なに、ちょっと数字が出てくるくらいで、別に難しい話じゃない。
 題して、「公立図書館の構成員について」だ。構成員とか言うと広域指定なんとかを連想するけど違うからな。くれぐれも違うからな。あっちは非合法暴力だけどこっちは合法暴力ゲフンゲフン。まあ、国家権力とは最もうまくいった暴力団なんて斜に構えた思想はおいといて話を進めようか。
 まず公立図書館を、この場合は都道府県や、市町村区などが税金から予算を出して運営する図書館と定義の確認をする。平たく言えば「○○市立」とか「○○町立」とかの名前がついてる、「役所(役場)の出先機関」としての図書館のことだ。
 この公立図書館で、建物の維持とかを除いた直接図書館業務に携わっている職員は、実はその出自から三種類に分類できる。
A.専門職員
B.一般職員
C.臨時職員
 用語は私が勝手に決めたものなので、実際にはこう呼ばれもしないし意識もされていない場合がある。
 Aは各自治体が司書資格保持者を対象に募集をかけてフルイにかけて採用した人々で、一生かけて一つの図書館に奉仕させられる予定の人々だ。この人たちは「情報のプロ」として認めていいだろう。
 Bは各自治体がただ「公務員募集」と言って集めた普通の「お役人」たちだ。こういう人は順当に行けば定年退職までの間に約10回は異動を体験するが、その中の一つとして図書館に勤務する。「公務員のプロ」ではあるが、「情報のプロ」ではない。
 Cは言うまでもないだろう。AでもBでも足りない部分を薄給で補わさせられる人々だ。AやBと違って書類仕事をやらせる訳にもいかんので、相対的に窓口に座る可能性が高くなる。つまり、もっとも利用者との接触時間の長い人たちでもある。「接客のプロ」にはなっても「情報のプロ」にはなれないだろう。
 図書館はこれらの三種類の人々を集めて運営されている。外部の人から見ると、こういう区別はどうでもよく、全て「図書館員」と見なされる。そうだよね? ファーストフードに入ってスマイル(¥0)している店員がベテランだろうと見習いだろうと客のやることは変わらない。メニューから選んで注文して、遅けりゃクレームつけるだけだ。図書館もそうだ。外部から見れば、AでもCでも「図書館員」だ。
 では、この三種の比率はどんなもんだろうか。ちなみに私はこの比率が1:4:5と言う図書館を知っている。……嘘じゃないって。さすがにそれは最悪の場合だが、それでも全体を10としたとき、Aが5に届くような図書館は少ないんじゃないだろうか。
 ちなみに「館長」と呼ばれる図書館の最高責任者は、Bであることが多いらしい。県立図書館の中には、天下りのとこもあるとか聞いたが、基本はBらしい。まあ、本オタクどもに好きに運営させてたらどうなるかわかったもんじゃねえ、と言う人事当局のつぶやきが聞こえてきそうではあるが。将来的にCの図書館長も出てくるんじゃないかな。公民館の館長が定年退職した元BのCなんてこともあるんだから図書館だって、とか言い出す奴が出てこないとも限らないし。そしてそれが認められないとも限らないし。

じゃあ、今の図書館員で情報のプロは半分以下しかいないの?

 いい質問だね。でも実は君が求めているような、「データベースを直接叩けるような」情報のプロに限定すると、もっと少なくなるんだよ。驚いたかい?
 いいかい。今現在の自治体図書館が雨後の筍のように立ち始めたのは、昭和四十年代、西暦にして1960年代からなんだ。そして知ってるかい? OPACの本格的な導入が始まったのは1980年代からなんだ。それも徐々に、ね。1960年代に図書館ができた当時、そこで採用された司書たちは当然皆優秀だったさ。ただし、その時代に求められていたスキルに関してのみ、優秀だったのさ。OPACが使えて、データベースをSQLで叩ける司書なんていなかった。そんなもの、当時は存在すら誰も知らなかっただろう。そして、採用された司書は公務員でもあるため、死んだり不祥事でも起さない限りずっとその図書館に居続ける。わかるだろう。時代が変わって、データベースを直突きできるような人材が求められたとしても、その人材の座る椅子がなかなか空かなかったのさ。
 大学生なら、就職課とか言われるところに言ったことがあるだろう。そこで公立図書館の司書の求人を探してみてくれ。……みつかった? 少なくなかったかな? 全国に今現在2,000以上3,000未満の地方自治体があり、そこに全て図書館があると仮定して、そしてそれぞれが司書を擁していると考えた時……司書の求人数は多いと思う? 少ないと思う?
 全国的に、自治体は公務員の数を絞りつつある。税収は減り、団塊の世代が人件費や退職金をがっぽり持って行く。必然的に公務員は減らさなければならない。そうでなければ夕張の二の舞になってしまう。そして採る以上は、優秀で、しかも使いまわしの出来る人材でなければならない。つまり、専門職員はお呼びでないってことだ。Aが引退した後、補充のAは来ない……。これは冗談では、ないのだ。
 これから団塊の世代がどんどん辞めて、それじゃあ椅子が空いて新しい人材が座れるかと思いきや、今度は椅子の数まで減らされてしまった。それが今の状況だ。
 情報のプロ、実にいい言葉の響きだ。若い諸君には、私みたいな紛い物・データオタクではなく、本物の「情報のプロ」を目指して欲しい、切にそう思うよ。……まあ、就職先があれば、の話だけどさ。
 話はこれで終わり。図書館のこと、少しはわかったかな? それじゃあ、またね!(次があれば)

 読子・リードマン「I want You !」
 全国の公立図書館は優秀な司書を募集しております。多分。
2008-01-21
まあ、金やら人事権があったら、臨時職員じゃなくいSEとかプログラミングができる司書雇って、業界全体の風潮に逆らって履歴の保存とかやったりして、かっこいいシステム作って利用率を上げたいですね、俺だったら。

公共図書館でとある学術誌の貸し出しを頼もうとした際に、カウンターの中の人に誌名を告げたら「一体何ですかそれは?雑誌?」と言われたことがあります。何ですかって、貴方こそ何ですか。

日本語のニュアンス - 永字八法
当方ではこのように教育しております(ました)。