図書館の貸出におけるデータマイニング

貸出履歴の利用についての疑問(一歩間違うと絶望) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)
 ブクマでも触れたけれども。
(電算化された)公共図書館ではそもそも貸出データを保存してこなかった。
 何故かと言えば、システム導入以前の貸出カード制の時は、「プライバシー保護」を掲げていながら守れていなかったと言う状況だったため、導入を機に「守れるようにしよう」と全体で動いたからだ(確か、そんな話だったと覚えている)。学校図書館を利用したことがあればわかるだろうが、貸出カードを見れば、その資料を誰が借りたかなどはまるわかりだし、個人カードにも貸出履歴が残っている。それは貸出状況を管理するためには必要なことではあるが、同時にプライバシー保護とは真っ向から対立するものだった。コンピュータの導入はその対立を解消する銀の弾丸のように歓迎されたのだ。(そして貸出カードを使っている限り、データマイニングなどは決して現実的な話ではなかった)
 ただ、プライバシーの保護が可能になったため、今度は反動として「保護しすぎ」も起こるようになった。この最たるものが、「返却後の貸出データの破棄」である。一旦借りた本を返してしまえば、図書館側からも過去何を借りたかがわからなくなってしまうシステムだ。(まあしかしこれは、図書館側からも都合よく使えるルールではある。……使い方は内緒)
 そんな訳で、公共図書館の中では「詳細な貸出履歴」は存在しないデータであり、よってそれを元にしたデータマイニングだのなんだのは不可能である、と言うのが共通認識だったようだ。だからこそ、図書館側はパッケージ開発会社にそういう要望を出さなかったし、開発会社側もそういう提案をしてこなかった。
 実際には、データベースをかじった人ならわかるだろうが、「貸出データの破棄」=「破棄フラグをつける」であるので、詳細なデータマイニングは当初からやろうと思えばやれたのであるが、このことを知っているのはシステムに近くなおかつコンピュータ系技術に詳しい人間だけなので、暗黙の了解と言うにも少々知っている人が少なすぎる。
 マーケティングを少しでもかじっている者からすれば、図書館のやっていることは宝を毎日ドブに捨てているように感じるだろう。しかしそれが現実なのだ。
 パッケージについているデータマイニングアプリは、データベースをSQLで直接叩いたりできないため、正直かゆいところに手が届かない。ユーザーである図書館員にそういうデータマイニングの意識・技能がないせいもあるだろうが、年報に記載するためのグラフ作成プログラム程度の位置付けでしかない。
 データマイニングアプリケーションを導入すれば、適本適所の資料の配置にもつながり、貸出率アップは間違いないと思われるが、それを阻害しているのは恐らく図書館員の意識だろう。
 最初からデータマイニングとは言わず、まずは利用者本人が自分の貸出履歴をチェックできるシステムの導入から始めてみたいところ。