殺人学概論第四講

殺人学概論第二講 - 永字八法で触れたとおり、ここでは警察に介入されるが、その介入を無効化ないし弱体化する方法について述べる。

  1. ミス・ディレクション
  2. 警察関係者による寝技
  3. 弱い警察を狙う

1については推理小説でもさんざん使われてきた、と言うより基本であって使わないことなど考えられない手法であるが、警察にも別の意味で有効である。
警察の捜査は、初動で大きく成果が左右される。この時に犯人の目星が正しくなければ、警察の組織力も宝の持ち腐れである。これに、事件を大きくして捜査本部などを設置させると、意味が出てくる。捜査本部などは、その指揮者は課長級やそれ以上と言うことになり、そうするとその初動捜査の方針はメンツにこだわる人間が決定することになる。もし間違った方針で初動捜査を行った場合、その後全ての捜査員が方針の間違いに気付いたとしても、メンツを優先させて当初の方針を強行することがある。
歴史に名高い三億円事件だが、実際のところ専従の捜査員には内心犯人の目星が(主犯共犯二名ともに)ついていたと言う。しかし当初の捜査方針に従うならば、彼らは容疑者の外にいたのである。第一講で言うところの6の状況に相当する。
そのために、別のもっともらしい手がかりをばら撒いておくのがゆうこうである。
2については、これもまた組織のメンツを利用した方法である。事件の関係者、ないしは容疑者の範囲に、警察OBや現職警察官の家族友人を含めておくだけで可能である。なお、この警察関係者には、あらかじめ何らかの方法で叩けば出てくるほこりをかぶせておくのが望ましい。汚職とか着服とか、その程度で構わないし、そもそも事件の全容等教えておく必要もない。また、できれば、警察の中でも高い地位にある人間の係累を使うのもいい。市民から見れば胸糞悪くなる性質であるが、うまく決まればどんなに決定的な証拠が出てこようとも警察の方からその証拠を無効化してくれる。科学的捜査による結果も、全て捻じ曲げて解釈してくれるので、警察をおちょくるには逆に有効である。
余談であるが、メンツを重んじる点では暴力団法指定団体と警察はとてもよく似ている。
3について。弱いと言うのは少々語弊があるかも知れない。かつて東北の方で少女を数年間にわたり監禁していた事件があったが、これには警察の能力の向き不向きも関係していたことは確かだ。
殺人事件と言えば怨恨を動機とする尊属殺人がほとんど、その他は金品目当ての空き巣程度の環境に慣らされた警察は、事件の(その警察にとって)異常な状況についていけず、どう捜査すればいいのかすらわからなかったために解決できなかったのである。
田舎、崩れ易い山道、嵐、孤島などの条件によって警察が能力を発揮できない状況を作り出すのも応用である。
その他、さきほどの検死官制度にしても政令指定都市以上には検死官を置くように制度は定められているが、実際には福岡札幌には予算を理由として置いていない。従って、念入りな検死が必要な事件が起こった場合には、検死を専門としない医者が検死に当たるため、見落としをする可能性が高くなる。これもまた社会学上の地理を利用した警察の弱体化に入る。