学校を出よう!〈3〉The Laughing Bootleg (電撃文庫)

学校を出よう!〈3〉The Laughing Bootleg (電撃文庫)

学校を出よう!〈3〉The Laughing Bootleg (電撃文庫)

3巻ですね。主人公は黒づくめの対魔班光明寺茉衣子ですか。なるほど。このシリーズはこのまま主人公を切り替えながら進む、と。まあ、まだまだ究極的なオチにはほど遠いですが、この手のシリーズは今更途中でやめたりしても文句は出ないでしょう。
これを読みながら思ったことは、SFとミステリの差異と、その折衷(融合と言うほど大げさでもない)についてでした。
最初に嘘ありきのSFと、最初から最後までロジックで固めるミステリの間には、大きな溝がある訳で。論理学で言えば、最初の前提が間違っていればそこから展開する論は全て偽です。
ミステリは、正解の前提と論理を最初に用意しておいてその証明過程を時には故意に間違ってみせたりしながら面白おかしく書くのが使命です。逆にSFは最初に大嘘(まだ理論段階だったりそれこそ全く説明のない技術)を最初に前提として、その上に説得力あふれた(偽の)論理展開でもって面白おかしく書くのが使命です。
こうして比べてみると、SFとミステリは相容れないもののようです。最もこれは、SFを魔法使いのいるファンタジーに置き換えても同じことが言えるのですが。
で、思い出したのは「がんばれ酢めし疑獄!!」の中の思春期探偵の一本です。
「……を殺したのはあなたですね? 違いますか」
「はい、私です。……を殺した後、黒魔術で悪魔を呼び出し密室を作りました」
もし、これが本物のミステリであれば投石物ですね。魔術が有効と言う嘘が前提にありながら、読者がそれを知らないのですから読者としては「ふざけるな」の一言でしょう。
SF(ファンタジー)とミステリを折衷させるには、前提となる嘘にきちんとした定義と説得力を与え、その上で定義に従った嘘かつ説得力のある論理展開をしなければならない訳です。正直、労力は二倍じゃないでしょうか。前巻でも同様な感触がありましたが、今回で両立は明らかになったと私個人は思います。
鋼鉄都市」「はだかの太陽」が好きな私には、好ましく思えた一品でした。