ほんとにやってけてんのかな。

ふと、ある自炊業者のサイトに「月5,000冊以上を電子化しています!」とかの記述があって、え、言っていいのかそんなの、みたいな思いに駆られたのでちょっと書き散らしてみる。
実際商売人やってる兄者に聞くと「いや別に」なので特に秘密にしないといけないような数字ではないようだが、そこから推測できる数字や状況にドキドキしてきたので、検証したいと思った次第。
推測とか思うとかが多いのは、俺が商売人や経済の専門家ではないからだと指摘しておきます。

経営者として

月5,000冊と言うことは現在の自炊代行の相場が一冊100円から200円程度として、月商が50万円から100万円程度に収まると言うこと。
初期の設備投資は無視しても、正社員ならせいぜいが二人から三人、非正規でも四人から五人が限界の数字で、それでも利益が出るかどうかはわからなくて、後で書く労働条件と組み合わせるとやってらんないって数字だと思うんだがどう?
昔、あずまんがの二次創作同人誌でちよちゃんが既にやり手経営者で、それでも系列の同人印刷屋の手伝いで会場にオフセ本を搬入すると言うネタがあったが、「系列に赤字があると連結決算で税金を安くできるんですよー」と生々しいセリフを吐かせていたのを思い出す。
月5,000冊と言う数字が正しいならば、赤字上等であり、そうでないならば月5,000冊と言う数字がフェイクと言うことになって、実際にはもっと集めないと自転車操業もできないと思われる。

労働者として

月5,000冊と言うことは、完全ホワイトとして月の営業日が20日、1日に250冊さばくことになる。これは勤務時間が8時間とするなら、時間あたり31冊ほど、2分で1冊のペースを堅持しなければならない。これもトラブルが一切ないと言う有り得ない仮定での数字。
で、旧ScanSnapの性能が一分で20枚40ページをさばけるので、本の厚みを平均で200ページとするならば、一冊5分が必要と言うことになる。
ので、前述の2分で一冊のペースを守ろうとすると、ScanSnapなら2.5台、つまり3台以上のレーンを用意し、しかもそれらに専任のオペレーターをつけなければならない。オペレーターも兼任としても2台がせいぜいではないか。
しかもこの数字は純粋にスキャンだけで、送られてきた本のチェック、裁断、検品、送付、請求にそれぞれ別の人間を当てるか、残業で対処するしかない。
前項で推測した雇用状況を考えると、実体はブラックじゃないとやってられないんじゃないか、と言う感覚。

上記二項を踏まえて

今後は単価値上げしないとやってらんないね。あるいは、付加価値をつけるか。
元々、相場の100円と言う数字も、現bookscanの社長がインタビューの中で確か、「友人の引越しに伴う単発の仕事として、面白そうだから受けた。その時、お互いよくわからなかったから適当に一冊100円とした」そんな趣旨の話をしているので、まさに先駆者が決めてしまって後で業界全体が四苦八苦するパターン。手塚先生の遺族はアニメーターに一言あってしかるべき。
まあ、どっかのお偉い経営者の方が、「むしろ、定価が決まっているならそれで実現可能な商品やサービスを作れ」と言ったりしてるので、単価100円でもなんとか回る特殊な業務用スキャナでも開発されるのを待つのも手でしょうね。それで導入費用が回収できるのかどうかは知らんですけど。
さて。自炊代行業者に依頼するなら、(著作権法的なゴタゴタを差し置いても)今のうちじゃないですかね。

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   |Д`) ジスイスルナラ、イマノウチ
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