信用の話

こういう商売やっていると、民間の人から「こういう問題があるんだけど、どうにかしてくれ」みたいな電話や相談を、どの部署であっても受けることがある。と言うか、ない訳がない。
ところが、問題を詳しく把握するためつっこんだ質問をすると、相談者の側で途端にガードを堅くしてしまうことがある。
「そんなに個人情報聞き出してどうすんの?」みたいなことを言われるのである。この言い方が増えたのは個人情報保護法の名前がメディアに踊るようになってからのことだが、それ以前も似たような傾向はあった。つまるところ、公権力(とみなせる何か)への不信があって、それが言葉を濁らせる原因になっている訳だが。
他の同僚がどう思っているかは知らないが、俺としては悩んだ末に「はあそうですか」と言うしかない境地に達している。情報がなければ対処法も一般論に偏ったものにならざるを得ない訳で、相談をされても十分な配慮ができない可能性も生じてくる。しかしそれが、相談者の選択だと割り切らざるを得ない訳だ。こっちから「信用してくださってもいいんですよー」とか言っても担保になるものがないんだから説得力がある訳もなく。実際汚職する公務員だっている訳なので、公務員への不信を持つ人が一定量いるのも確かだし。
ただ経験上、いわゆる「匿名の苦情」みたいなものが一番効果がない。
たとえば、「職員の対応が悪い」と言う苦情があったとして、「どの職員か」「どのような話をしていた時にか」などの情報がなければ、結局なにも出来ないのである。朝礼の時間に「職員の対応が悪いと言う苦情がありました。各自なお一層気をつけてください」「はーい」で終わりである。実際これ以上の何ができると言うんだろう。何かある? 問題ってのは何が問題なのかをきっちり把握するところから解決が始まるのですよ、と。
「だって公務員に苦情を言う人だって認識されると、なんだか裏から手を回されて変なことされそうじゃない」と言う気持ちはわからないでもないし、そういう人に対して「そんなことやってる暇も余裕もねーよ」みたいなことを言っても考えを変えないだろうから、いわゆるハーバード流交渉術「立場ではなく利益で話せ」に則った言い方をするしかない。
「匿名でも何でも構いませんけど、細かい事情がわかった方がより多く改善されますよ(そしてあなたへのリターンも大きくなるはずですよ)」
まあ、実際のところ本当に改善したいんじゃなくてただ単に愚痴を吐きだしたいだけのことも多いんだけどさ。