余り物には福がある?

ドーナツホールと言うお菓子がある。
直訳すると「ドーナツの穴」つまりは「存在しないもの」と言う意味になるのだが、ある。
今でこそドーナツは生地を専用の道具でリング状にして煮えたぎった油に放り込まれて作られるものだが、昔は大きさの違う円形の型を使ってクッキーのように生地から整形されていた。この、リング状にした後、残った小さな円がドーナツホールの材料である。これもまた一緒に油に入れるのだが、ドーナツとは大きさが違うため火の通り方が違い、微妙に味や歯ごたえが違ってくる。これに(ドーナツと同じように)様々なトッピングをすることで、別のお菓子として独立するに到ったわけだ。
実はこれ何も見ずに書いている。昔の流行のセリフを引用するならば、「私の記憶が確かならば」と言う奴だ。これについてはまさに額面通りで、リアル厨房の頃、NHKラジオ「基礎英語」のテキストのコラムに書いてあったのを斜め読みした内容である。
さて、それは話の枕として。
ある日、知人のお土産として食卓になんだかやたらと濃い茶色のスポンジのようなものが出された。薄く切られたそれは、強い焦臭と甘味を持っており、大変美味であった。ただのケーキのスポンジと言う訳でもなさそうだ。
これは何かと家人に問うと、家人曰く「カステラの端っこ」だそうである。
カステラは、窯から取り出した直後は、全表面がこげ茶色になった平べったい直方体の形をしている。その四方を切り落すことで、中の卵色のスポンジが現れ、天地をこげ茶色に染めたいわゆる「カステラ」の形になる。その切り落とした四方をくれたのだと言う。つまりは、カステラの天地のこげ茶色だけを集めて食べていたようなものである。道理で甘い*1訳である。もむもむ。
そういや、「美味しんぼ」でも魚は骨の周辺の肉をこそぎ落として食べるのが一番旨いよね、なんて話をやっていたこともあって、海老があったら味噌まですするのが趣味の俺としては大変納得の行く話ではあった。ただし、カマンベールチーズの端っこの固い部分だけはそれだけ食っても旨くないどころか、歯が欠けることもあると言う*2
ただ、先日行ったエロDVD屋で詰め合わせ福袋が売っていたりして、いかにも地雷っぽい感じがしてすごいイヤだった。
やはり福があるかどうかは場合によりけり、と言う当たり前の結論を置いてオチとする。

*1:「うまい」と書いて「あまい」と読む

*2:サラ・イイネス(当時)「大阪豆ゴハン」より。