ザ・スター
友人より「是非読むべきだ」と無理やり押し付けられた本。悔しい! でも読んじゃう!(ビクンビクン)
一読しましたが、いやーこれは快作(怪作?)ですわ。
高校生長瀬優也は、家族から勝手にオーディションにエントリーされ、しょうがなくそれに参加するが、芝居こそ自分のやりたかったことだと理解し、以後はひたすら芝居に打ち込み、世界を制する。そういうサクセスストーリーなんですが。
少年漫画の文法で再構成された「ガラスの仮面」と言えばいいのか、役者漫画の体裁を取った「バキ」と呼べばいいのか、実に判断に迷う。芝居のためなら命も惜しくない役者馬鹿が、主人公含めてゴロゴロ出てきて、中には文字通り死んでいく。これはもう「役者バカ一代」のタイトルでつのだじろうに再構成げふんげふん。
全編少年漫画的嘘表現にあふれており、鮫と水の中で格闘なんか普通にあって、香港アクションスタント編や歌舞伎編は、人間にできないことを平然とやってのける。しかもそれができる説明付けが「命を賭けるからだ」しかなかったりして、まあ不器用なこと。
とは言え、読んでいる最中は苦笑しつつも目が離せない訳で、作者の力技は本当にすごいです。
もっとも、一番ほめるべきは、こういう難しい多重構造、入れ子構造の漫画を始めてしまおうと言う作者だか編集だかの勇気(蛮勇?)でありましょうが。漫画と言うのはそれだけで一つの芝居であり、その芝居の中でさらに芝居をやる訳ですから、漫画の大半が劇中劇になってしまう訳で、構成が難しくなるのはどうしようもない。役にかこつけて役者が自分の内心を吐露するシーンがざらに出てくるのですが、漫画そのものも作者の思想をキャラクターに吠えさせる作業と考えれば、これは一体どれが誰の意思なのか、考察のしようもあると言うものでありましょう。
普通にネタ漫画として読んでも面白いですけどね。
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