追い詰められた夢

こんな、夢を見た。
仕事してたら、突然連絡を受ける。「お前、高校卒業してねーよ」どうやら、出席日数が足りなかったらしい。ていうか、そういうことはもっと早くに気づいとけ。学校も。こちとら就職してもう職場に慣れた後だっつーの。
休職して、母校に戻る。久しぶりに見た(嘘、仕事で前をよく通る)母校は、山の中にあったはずなのに、ヴェネチアみたいな場所になっていた。
きらきらと光るタンカーさえ通れそうな水路に、無数の巨大校舎が乱立し、それぞれを楽に車がすれ違えそうな渡り廊下が蜘蛛の巣のようにはりめぐらされていた。水路を囲む土手(エレベーターとエスカレーターのついた、ダムみたいな奴)から見下ろすと、初夏の太陽を反射する水面に、白のシャツと黒のズボン・スカートの笑いさざめく生徒たちを満載したゴンドラが、優雅に行きかっている。
夢の中では、廊下だとか物理準備室とか屋上だかをうろうろするだけで、結局どこの教室にも入らなかった。もっとも、一学年50以上あるクラスのうち、どれが自分の行くべき教室なのか、それすらもわからなかったのだが。クラスに行きつけなかったのは、きっと俺が嫌がっていたからだと思う。なんと言っても、三十路の喪男が高校に通うなど、罰ゲームか、長州力並の精神力でもない限りできない行為だろう。
学校の屋上で、心地よい風に吹かれながら空を見上げ、俺は何をしてるんだろう、と言う自問と、このまま学校から出られなくて社会に戻れないのではと言う焦燥に胸を焦がしながら目が覚めた。