寒鼠

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

 古本屋で300円で保護したが、それからすでに3ヶ月以上が経った。読み直す時期を待っていたのだ。
 この本の舞台は真冬の箱根の山奥。雪に覆われた山々、謎の古刹とたち並ぶ墨衣の僧侶! 全編を水墨画モノクロームなイメージが貫く怪作だ。この寒々としたイメージが好きで、気分を出すためにこのくそ寒い時期まで待っていたのだ。
 布団に入り、冷たい指先でページをめくっていると、実際にその場にいるように感じられる(そして他のキャラクターのように何が何だかわからないと右往左往するのだ)。
 寒さに震えながら読むにふさわしい本ってのは、他に何があるだろう。