パラレルなストーリー

通常、ミステリーにおいて真相は一種類である。
小説形式のミステリーではそれも当然で、一種類の結末しか用意できないからだし、加えてプレイヤーの出方によって真相を変えてしまってはそれは「フェア」ではないからだ。
しかし、ミステリーを題材にしたゲームにおいてもそうでなければならないとは誰も言っていないはずだ。
たとえば、臨界点 ~ クリティカルポイント ~ メモリアルセレクション もういちど君に逢いたいと言うアドベンチャーゲームがある。シナリオを松崎健一氏が担当していることもあって、SF的な雰囲気はかなりのものがある。そして、マルチエンディングであり、しかも選択によっては真相が変わると言う。
しかしこれはコマンド選択式アドベンチャーの限界もあって、真相Xがあるとして、その犯人の盲点をついた解決を目指すべく選択を重ねると、真相Yのルートに入ってしまうような事態を引き起こす。
プレイヤーにとってはなんとももどかしい限りである。
その解決として、シナリオ開始直前に、そのループの真相を予め決定してしまうと言う方策が考えられる。
その真相にあわせて、シナリオは若干のマイナーチェンジが行われる。その状態であれば、プレイヤーに大幅な自由度を与えたとしても、シナリオに矛盾が発生することはなく、またプレイヤーも真相に対し様々な解法を試すことができる。そして「フェア」であることも保たれる。
実はこの概念は、私が以前製作したオリスク「ノ編」によって(完成度はともかく)実現している。
シナリオを始める前に、真犯人と見せかけの犯人を、レナ、魅音、沙都子、梨花の中からそれぞれ選ぶようになっている。プレイヤーは16個ある■のどれかを選択してからシナリオを始める。どれをクリックしたかによって、真犯人と見せかけの犯人が決定される。誰になったかは、実際にシナリオを通じてしかわからないようになっているが。(一度クリアーした■は色が代わり、同じシナリオをプレイしなくていいようになっている)
オリスク自体は職員室で四人の証言を聞くことか、分校内を歩き回って行動の痕跡を集めるか、知恵先生に対し真相を披露するか、それだけしかない。が、分校内は自由に移動できるし、四人の証言の順番(あるいは聞くか聞かないか)もプレイヤーに選択権がある。何も調べず、あてずっぽうで知恵先生に対し真相を披露してもいい。そこで自爆するのもプレイヤーの自由だ。
一つのシナリオ、一つの設定で何度も遊べるものを作る方策として、このようなことを考えてみた。