萌える男 (ちくま新書)

萌える男 (ちくま新書)

萌える男 (ちくま新書)

本田さん、文章芸の幅が広いなあ……ちゃんとちくま新書のそれっぽい文体になってるよ。(←失礼)
それはともかく。
間違いない。電波男は救済を求める喪男達への宗教書だ。それもただの宗教書ではなくて、メタ宗教だ。
大半の宗教書が教義と言う形で「これこれこうすれば、幸せになれますよ」と説いており、究極的には均質化を求めるのに対し、この「萌える男」では「自分自身を救う自分専用宗教を自分で作ってしまえ」と説いているのだ。なればこそ、多様性を保ったまま自我を確立した人間たちの住む一種の理想社会が夢想できる。
その自分の精神を探り自我を確立させるツールとして、「萌え」と言う手段が有効だとしている。しかも用を足せさえすれば、この再建用ツールは「萌え」でなくても構わないのだろう。それが何なのかは明確ではないが。
ただし、あくまで小乗の宗教書であるので(一人一人が別個の教義を持つ以上、師から弟子へ、あるいは司祭から信徒へと言った伝道が不可能)、個人の精神の救済にはなっても、社会全体の変革は難しいのではないかと思える。
と言うのは、喪男化した男性たちは「萌え」で充足できるが、社会の反対側にいる女性たちの側の意識改革をうながすことができていないからだ。酒井順子倉田真由美恋愛資本主義の尖兵でありこそすれ、改革者ではないからだ。
敵対している以上、その間に交流は望めず、その結果として少子化はますます増進するのは目に見えている。
意識としてはこれでほぼ完成ではないかと思える。社会に影響を及ぼせる具体的なメソッドの考案にステージが移行した、そんな気がする。