ツキを呼ぶ魔法の言葉

http://iyashinomura.jp/store/cat-book/tsukiwo.html
数日前、家人が持って来た。詳しくは聞かなかったが、講演があったので行ってきて話を聞いた。よかったので買ってきたんだそうな。しかもサイン本。開くと、「○○さんへ」ともサインペンで書いてある。
……いやまあ、そうね。面白かったんならいいんじゃない? 正直、俺は引いた。おいおいおいと危機感すら感じた。
んでまあ、それでも読む訳ですよ。活字があったらとりあえず読む習性の我とわが身を嘆くばかりです。暇だったらティッシュの箱の底だって読むし。
奥付を確認。2004年8月22日に初版発行で、今手元にあるのは2005年8月11日の第三版第七刷だそうな。
あ、さて。
内容は、著者自身の体験談。二十五歳の時イスラエルに行ってドイツ系ユダヤ人の老婆(第二次大戦臭がする……)から不思議な歓待を受け、人生訓を授けられた後、二つの箱をもらって帰国する。その箱についても「誕生日に開けなさい」ときつく言い渡されるが、箱を無くす。結局、誕生日に将来妻となる女性からプレゼントとして渡される。ある日突然紛失したその箱が何故デパートで売っていたのかは不明なままだ。
それ以来、人生訓を守り続けて社長になり、現在に到る。
オカルトじみた展開だ。
紹介されている処世訓は二点。

  • 苦難の際には「ありがとう」と言う。
  • 平常時には「ツイている」と言う。

それに副次的な「絶対に汚い言葉を使わない」を守ること。
こうすれば簡単にツキを得ることができると説く。実例として、交通事故の際に「ありがとう」を叫んだおかげで平常心のまま対処でき、泥沼にならずに済んだ、とか。
また、ツキと言う不可視パラメータの増減について触れる割に、人間の生涯は運命によって決められていると言う運命論も説く。
おおまかに言うとこのような内容だが……。
言霊信仰に基づくポジティブシンキングのススメ以上には思えない。また、Web上の評判を色々読んでみたが……あまりけなすような内容もない。と言うより、このような他者の悪口を戒める本を読んだ後で批判的なことを口にする人間は少ないのだろう。
社会学的、心理学的にこの処世訓には一定の効果があると考えられる。能力が同じならば性格のいい方が社会的に高い評価を得られるのと同じ、競争原理として説明できるからだ。
まあそれでも、私は批判するんだが。
「こうすれば不可視パラメータであるツキを入手できる」とメソッドを示すのはいいが、「何故そうなるのか」を説明していないことに不安が残る。再現可能性のある(と主張する)メソッドであるが、原理が不明なままだ。著者は科学者でありながら、その原理解明を放棄している(ように見える)。そこがこのメソッドの気に食わない点なのだが。
個人が個人の経験則として実施する分には全く問題ないと思うが、それを他者に広めようと言うのはどうかと。まあ、広めようとしたのは本人ではないようだが。
全面的に記述してある内容を信じる訳ではないが、ある程度のポジティブシンキングをやってみる気にはなった。最近仕事で腐ってたからなあ。