所在不明

電話があった。俺が取った。相手の第一声は以下のようなものだった。マジで。

「送られても困るんだよ!」

インパクトは充分だ。

俺「……何がですか?」
「何て……名前と、本の名前書いてるハガキだよ。送られても困るんだよ」
俺「督促状でしょうか」
「なんでもいいけど、送られても困るんだよ!」
俺「何故でしょうか?」
「何故ぇ? 困るって言ってんだろ!」
俺「いえですから、どうして困るんですか? 本を借りてるんですよね」
「借りてねえよ本人もういねえんだよ!」
俺「はあ……」
「だから、もう送るなよ」
俺「何故ですか?」
「送るなって言ってるだろ!」
俺「どこに送るなと? そもそも、どちらさまでしょうか」
「かわれ! お前じゃ話にならん!」
俺「お名前をいただけますか?」
「かわれ! エラい奴にかわれ!」
俺「上につなぐ時は必ず名前をいただくようになっています(本当)」
「名前は言わん! とにかく送るな!」
俺「どこにですか?」
「○○○だ! とにかく送るな!」
俺「いえ、本を返していただけない以上は送り続けることになりますが」
「なんやと、送ってみろ、訴えるからな」
俺「そうですか。で、誰に送るなと言ってるんですか?」
「うるさい! もういい!」

だいたいこんな感じ。
数日前に担当が延滞本の督促ハガキを大量発送(定期業務)していたから、そのどれかがヒットしたものだと思われるが、ここまでアレなのも珍しい反応だ。
一度しか聞いてないうろ覚えの住所だけでは、調べるのも面倒臭いのでそのままうっちゃってある。裁判か……被害者が匿名のまま起訴することもできるそうだが、法廷に出れば名前とかわかるんだろうなあ。
まあ、その、なんだ。
「盗人猛々しい」とはこのことだ。