電波男

電波男

電波男

その情念に一度触れるや、全て読み終わるまで目をそらすことも許されない怪作。
現在の日本社会を、電通主導によって構築された恋愛資本主義と喝破し、そこからの解脱を呼びかける啓蒙書。主なキーワードはニーチェ手塚治虫梶原一騎、負け犬。
しろはたに随時掲載された文章を、一気に読み上げられるように編集した内容なので、サイトに日参している人には新しい内容ではない。が、まとめられてみるとその密度、文章力に度肝を抜かれる。
何より、あとがきがすごい。これだけで“It(それ)”と呼ばれた子に匹敵するインパクトを持っている。そのようなルサンチマンがあり、辛酸を嘗め尽くして来たからこそ、このような社会理論を編み出せたのだとひしひしと感じる。文学は目指す物ではない。社会や様々な環境により、否応無しになってしまうものなのだ。
迫害され、生きることに疲れたオタクに読ませたい。彼らにとって、この書は福音になるだろう。少なくとも、自分が一人ではないことを知るだろう。
30を過ぎ、焦りだした負け犬女に読ませたい。彼女らにとって、自分を正視する機会になるだろう。もっとも、正視できないからこそ、負け犬になってしまったのだろうが。
……いやこれ、マジで酒井順子に読ませたいんだけど。読んだとしてもたぶん黙殺するんだろうけどなあ。ああいう人って、どうしてこう簡単に思考停止してしまえるんだろうか。
もっと売れろ。この本はもっと読まれていい本だ。

全てのオタクに幸福を。全ての非オタクにも幸福を。
快楽を幸福と思うなかれ。欲望に操られずに飼い慣らせ。
自分をコントロールしろ。世界をありのままに受け入れろ。