同人誌バカ一代―イワえもんが残したもの

同人誌バカ一代―イワえもんが残したもの

同人誌バカ一代―イワえもんが残したもの

イワえもんの本。追悼本とも言えるか。
星の時計のLiddell (1)について触れている部分は、私がその作品を読んでいないのでなんとも評価しようがないが、それ以外の同人についての考察は、非常に参考になる。
スタージョンの言葉を借りるなら(コミケで頒布されているものの)「9割はクズ」な訳だが、そのクズに対する愛が、全編を通じて感じられる。
紹介されている同人誌や原稿の日付などは2000年で止まっているものの、その評論は的確だ。同人誌やコミケがこれからどうなるかわからないことを説明したくだりは、胃が痛くなるような焦燥感とともに納得できる。コミケは巨大な船だ。しかし舵はなく、しかも目的地がない。中ではいつも祭りが行われており、乗りたい者が乗り、降りたい者が降りる。
印刷所の努力により、あらゆる印刷方法が可能になり、不可能がなくなることによって逆にそれらは使われなくなっている。電子データはFDからCD・DVDが主流に移行した。しかし、新しい技術は生まれてこず、コンテンツだけで差異をはかるしかなくなっている。
バブルがはじけ、ジャンルは細分化した。この先はどうなるかわからない。
これだけの読みを、2000年の時点で行っていたと言うのであるから、何をかいわんや。中心にいながら客観的な視点をも持つ異才と言って差し支えないだろう。
本当に、その死が悼まれる人物である。