なぜ、賢い人が集まると愚かな組織ができるのか - 組織の知性を高める7つの条件

涙なしには読めない本。
企業を中心に結局何がまずいのかを実例をあげながら説いていく内容なのですが、自分の所属する組織にそれら解法をあてはめようとすると、途端に絶望的な気分になれます。なんと硬直化していることかと。

  1. アルブレヒトの法則
  2. 考えることをやめた人々
  3. OI:組織の知性
  4. わかりやすいビジョン
  5. 全員を結ぶ一体感
  6. 変わろうとする意志
  7. 仕事への情熱
  8. 足並みの揃った組織
  9. 知識を広め、活かす
  10. 「結果を出す」という心構え
  11. 変化に立ち向かう
  12. 企業に心理療法をほどこす

理論については読んでもらうのが一番ですが、いくつかあげられた実例から教訓を引き出してみると。

病院でリネンの消費量を抑えようとして、リネンの配給制を敷いた。すると逆に消費量が増えた。配給制にすると、余ったリネンを返却せずに溜め込んで、看護士同士で融通するようになるからだ。逆に、全ての看護士を巻き込んで話し合いを行った結果、配給制はなしで消費量を削減できた。

行き過ぎた管理は逆効果と言う好例ですね。

工場の一工程。そこの担当者の役目は、ロボットが作る製品が不良品でないかどうかをチェックすること。不良品であればそれをベルトコンベアから抜き出して廃棄する。担当者に仕事について聞いてみた。「仕事は簡単です。悩みは、不良品を入れるゴミ箱が小さすぎることです」ずっと以前からその機械は不良品しか作らなくなっていた。

この工場はマネジメントが行き届いていた。なので、この担当者は、そういう報告をしなかった。製品が完成しなければ工場長か誰かマネージャーが気付くはずだからだ。仕組みを頑丈に作りすぎるために、人間から柔軟性が失われている。
この二つの事例から得られる共通の教訓は、「駄目な組織は構成員同士のコミニュケーションがうまくいっていない」である。

フォード社が、一大キャンペーンを張った。CMの内容を要約すると「不満があればすぐになおします」だった。全国放送で流れ、不満を持つフォード車のオーナーたちは、すぐにディーラーの元に押し寄せた。しかし、ディーラーはその宣伝のことについて何も知らなかったので、ディーラーは右往左往し、オーナーたちは不満を持ちつづけた。

何か新しいことを始める時には、その影響度を予測してそれに巻き込まれるステーク・ホルダーを確認し、それらの間で調整をしてからでないといけない。教訓とも言えない当たり前のことだ。ちなみにこういうのを日本では「気配り」と言うらしい。

企業の危機的状況は、経営層の中では5段階のフェーズを経て認識される。

  1. 危機から目をそらす
    ライバル社が自分の分野に参入してきたりしても、危機だとは思わないで放っておく。
  2. 危機を認めるが変わる必要を認めない
    危機は危機だが、現在の手持ちの資産、技術、手法で充分に対処できると主張する。
  3. 犯人さがし
    危機のために実際に被害をこうむり始める。するとマーケティング部門などを何をやっていたのかと責める。あるいは誰かをクビにしたり降格したりする。
  4. 新しい現実に対処する
    危機を認め、現実を認め、打開策を模索し始める。
  5. 全社一丸
    ほとんどの場合、非経営層は現状をもっと以前から認識している。経営層と非経営層の認識が一致したことを両者が確認し、全社が一丸となって新しいことに乗り出し始める。

恐らく、この5段階をどれだけ早く通過できるかが、優れた経営層に求められる素質ではないだろうか。

ある企業の重役たちが、ヘッドハンターに依頼をした。「聡明で、熱意があり、ビジョンを持ち、独創的な考え方をする人を探してきてくれ。重役として迎えたい」ヘッドハンターは、依頼した企業の重役たちのプロフィールや経歴を調べ、平均化した。その平均像に最も近いプロフィールの持ち主をヘッドハントしてきた。すると、ヘッドハンターはたいそう喜ばれた。

戦慄の事例でした。

また、組織のリーダーは実際には知性もカリスマもないことがほとんどです。
カリスマのある人は、組織をうまくまとめようとして、仕方なくリーダーになるように働きかけます。
知性のある人は、やりたいことを実現するのに組織力が必要で、必要だからリーダーになるように働きます。
けれど、リーダーになって威張りたいだけの人もおり、こういう人は能力の全てを出世のための機会を作り、物にするためだけに行動します。かける労力が何倍にもなって、結果として前二者に比べて出世しますが、しかし何かがしたい訳でもないので、リーダーになったからと言って何かいいことをする訳ではありません。
こういう人をリーダーにさせないようにする仕組みが必要です。

経営陣が「愚かな大衆説」の信奉者だと、そこで働く従業員は不幸です。
経営陣は、最下層の社員を知性がなく独創性にかけた、いわば家畜と同じようにしか思っていない場合、「現場の意見を汲み上げる」ことが事実上不可能になるからです。家畜が人間の言葉をしゃべりますか?
最前線で働いている社員の心と経営陣の心が離れていれば、そこにあるのは当然軋轢であり、コミニュケーション不足を原因としたありとあらゆる弊害です。

で、繰り返しですが。
自分の所属する企業のことを思いながらこの本を読むと、組織の現状に対する絶望と、それに対して何もできない無力感にうちのめされる訳です。