クリエイティヴ脚本術―神話学・心理学的アプローチによる物語創作のメソッド

クリエイティヴ脚本術―神話学・心理学的アプローチによる物語創作のメソッド

クリエイティヴ脚本術―神話学・心理学的アプローチによる物語創作のメソッド

物語のテンプレート論として非常にわかりやすい。
神話伝説が何故変容を続けながらも現在まで残るにいたったのか。その理由付けとしてゴールデンパラダイムなる概念を提示している。
神話伝説はその基となった何らかの事実があるはずだが、それは人口に膾炙するうちに事実とは異なった内容に変容する。が、変容するが故に人々の記憶や印象に残る形式に整えられ、現在に至るまで伝えられるのだと言う。
次にその「人々の記憶や印象に残る形式」=ゴールデンパラダイムについて触れており、ストーリーの展開やそこに配置される人物の役割を説明している。(ただし、ゴールデンパラダイムの摘要になれない内は、作成できる物語が一人の英雄に視点を据えたものに偏りやすい)
興味深いのは、ゴールデンパラダイムは円環構造をなしており、一人の英雄の誕生、成長、成功だけでなく、その変質、悪行、破滅までを描いて一巡とする部分である(オイディプスは英雄として成功するが、その後父王殺し、実母との結婚の罪を犯して破滅する)。そして以前の英雄によってなされた悪行が、次の英雄を生み出す素地となり、世界は円環をなし物語は完成しつつ次へつながる。

この書物はハリウッドで脚本を作っていた筆者によるものだが、これを読んで思い出したのは、神話を持たない民族=アメリカ人がその代替物として映画を選び、その託宣所保管所としてハリウッドを作ったと言う論である。ハリウッドで量産される様々なサーガが多分に神話的な壮大さを持っているのは、実は当然なことなのかも知れない。

神話や伝説に詳しくそのモチーフを生かした創作(リスペクト?)をなす者にあっては、この本で提示される方法論はわかりやすく実践しやすいでしょう。私自身はこの本をかなり気に入っています。