ブンガクに政治を持ち込むなよ……

「中国嫁の差別性」によせて - そこにいるか - The cape of an islandを読んだけれども直後の印象としては「……で、何が言いたいん?」以上の物もなく。
こういうコンテンツ商売で過度に用語の政治性とかポリティカル・コレクトネスに留意するとどんどん面白さがスポイルされるのは何百年も前からわかっている周知の事実で。
たとえば、ダンテが神曲作中で当時の自分の政敵を地獄に落として悦に入っているのを、現代人は注釈がないと理解できないし、しかもそれを作品の本筋には不要のディテールであり、もう作者ダンテに対して「私怨乙」としか言いようがない。
もし仮に徹底的にポリティカル・コレクトネスに留意したとすると、それはもうそれを逆手に取ったギャグにしか成り得ない訳で。

政治的に正しいおとぎ話

政治的に正しいおとぎ話

政治的にもっと正しいおとぎ話

政治的にもっと正しいおとぎ話

たとえばこんな本だったり。「木こり」のことを「燃料供給業者」と呼んだりして何がどうなると言うんだ。
刑事コロンボがこんなこと言わなきゃならんのか?
フランスのルパン三世では、次元大介はシケモクのかわりにチュッパチャップスをずっと口にくわえている訳だが、それでかっこ良さが保てるのか?
率直に言って、「角を矯めて牛を殺す」以外の何者でもないと思うよ。ブンガク殺して楽しいか?
あまつさえ、「嫁の字は原義からしてうんたら〜」だったら「民」って字も「幸」って字も使うなよ。白石先生の言ってることだぞ。「民」は目を潰された奴隷階級を表現した文字で〜とか、「幸」は手枷から解き放たれたポーズが元で〜とか。「嫁」の字の差別性に言及するなら、その他の文字にもしてやれよ。文字を差別すんな。
それに、現在において「嫁」がどのような文脈で使われているかを考えれば、「家父長制度が〜」なんてのはヤクザのいちゃもんと同レベル。オタクが「嫁」と言ったら奴隷どころか崇拝するご本尊だろうが。
しかもこのツイートに対する批判もなあ。これを女性差別を背景にした男性側からの「善導」みたいに読むとか、どんだけ頭の中が差別に染まってるんだ。これは、コンテンツ商売で飯食ってる人間が、そうでない素人に向けて気づいていないor考察の甘い点を指摘しているだけだろう。知識格差・経験格差こそが背景であって、それは補填不可能な差ではない。それすらも差別とか言っちゃうんだろうかこの人は。