家人の思い出

 以前、家人がオレオレ詐欺にあった時のこと。
 なにかの大会で、家人が競技場だがなんだかの観客席から試合の様子を眺めている時に、その電話はかかってきた。

「アンタの息子さんが事故おこしたんだけどねえ」
「どの?」
「……」

 などとのらりくらりとかわして相手の怒りを煽っていったそうな。すると、決定的な一言。

「てめえ、ぶっ殺すぞ!」
 家人は喜色満面で言った。
「その言葉を待っとったんや! いやー、やっと言ってくれたなあ!」

 つまりは、脅迫とかそんなレベルじゃなくて殺人未遂とかで訴えますよ、と言外に言った訳で。
 途端にぶつりと電話は切れましたとさ。
 側にいて一部始終を聞いていた若い女性がすごいすごいと誉めてくれたことの方が嬉しかったそうです。
 脅迫や騙しに対してまともに対処する方がまずいと言うことか。理不尽には理を以って、しかしながらさらなる理不尽を構築してたたき返すのが効果的、と言うことか。